Webライターが契約書で確認すべきなのは、報酬・修正・著作権・解除の4か所です。
全条項を理解する必要はありません。
4か所を確かめずに署名すると、終わらない修正対応や、支払いの遅い取引を自力で断ち切れなくなります。
契約書が渡されないまま作業が始まった場合も、メールで取引条件を残しておけば自衛が可能です。
Webライターが契約書のどこを、どの順番で読めばよいのかを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
Webライターが契約書で確認すべき9つの条項

契約書は、全条項を理解する必要はありません。
次の表の9条項を上から順に照らし合わせれば、締結前に見るべき点はひと通り押さえられます。
| 条項名 | 確認すること | 危険なサイン | 解説の場所 |
|---|---|---|---|
| 業務内容 | 執筆範囲と本数 | 「その他付随業務」 | 報酬の項 |
| 報酬額 | 単価と計算方法 | 金額の記載がない | 報酬の項 |
| 支払期日 | 受領日から60日以内か | 「別途協議」 | 報酬の項 |
| 検収 | 合格の基準と期限 | 期限の定めがない | 修正の項 |
| 修正回数 | 無償対応の上限 | 「納得するまで」 | 修正の項 |
| 著作権の帰属 | 譲渡時期と27条・28条の特掲 | 特掲がない | 著作権の項 |
| 契約不適合責任 | 通知を受ける期間 | 期間が無制限 | 解除の項 |
| 損害賠償 | 賠償額の上限 | 上限の定めがない | 解除の項 |
| 契約期間と解除 | 解除の予告期間 | 即時解除のみ | 解除の項 |
空欄の条項や「別途協議」とだけ書かれた条項があれば、その行にメモを残し、締結前に発注元へ質問してください。
報酬と納品にかかわる条項の確認ポイント

報酬まわりで確認する箇所は、金額だけではありません。
報酬額の算定方法・支払期日・検収・修正回数の4点まで、契約書の文言を追ってください。
4点が曖昧なままだと、作業量が増えても手取りが変わらない契約になります。順に確認しましょう。
報酬額と算定方法が確定しているか確認する
報酬額は、金額そのものと算定の単位がセットで書かれているか確認してください。
フリーランス新法では、報酬の額は取引条件の明示が義務づけられた9項目のひとつです。
「報酬は別途協議のうえ定める」とだけ書かれた契約書では、金額の根拠が後から動きます。
1記事あたりの固定額か文字単価か、構成案の作成や画像選定、取材対応まで報酬に含まれるのかを、給付の内容の記載と照らして確かめましょう。
金額が税込か税抜かも、あとから食い違いやすい点なので確認してください。
支払期日は納品から60日以内か確認する
支払期日は、納品日から起算して60日以内に設定されているか確認してください。
フリーランス新法では、報酬は受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払うと定められています。
気をつけたいのが「月末締め翌々月払い」という支払サイトです。
月初に納品すると、締め日を待ってから支払日が来るため、納品日から60日を超えるおそれがあります。
契約書の支払条件を自分の納品予定日に当てはめて、実際の日数を数えてみましょう。
検収の基準と期限が書かれているか確認する
検収の基準と期限が書かれているか、契約書で確かめてください。
検収とは、納品物が発注内容を満たしているかを発注者が判定する手続きです。
フリーランス新法でも、検査をする場合は検査を完了する日が明示すべき事項に含まれます。
期限の定めがないと、合否が決まらないまま支払いだけが先送りにされる状態になりかねません。
一定期間内に連絡がなければ合格とみなす、といった条項があれば、宙ぶらりんの状態を避けられます。
合格の基準も、構成案どおりか、指定文字数を満たしているかという形で具体化してもらいましょう。
修正回数の上限が決められているか確認する
修正回数は、上限か、上限を超えた場合の追加報酬のどちらかが書かれているか確認してください。
回数の定めがない契約書は珍しくありませんが、修正が無制限に続くと1本あたりの作業時間だけが増える結果になりかねません。
同じ報酬のまま作業時間が伸びれば、時給に換算した実入りは下がっていきます。
「修正は2回まで、3回目以降は別途見積り」といった形で書き添えてもらえるかが、条件の良し悪しを見分ける材料です。
上限を設けにくいと言われた場合は、修正の範囲を初回の構成や指示から外れた部分に限るという決め方もあります。
着手後に交渉するより締結前のほうが通りやすいので、契約書を受け取った段階で切り出してください。
著作権は譲渡条項がなければライターに残る

著作権の条項は、譲渡に関する記載があるかどうかだけを先に見てください。
報酬の支払いと権利の移転は別の話なので、記載がなければ著作権はライターの手元に残ります。
確認する順番は、譲渡の有無、二次利用、著作者人格権、掲載許諾の4点と考えて読み進めましょう。
報酬を支払っただけでは著作権は移らない
原稿を納品して報酬を受け取っても、それだけで著作権が発注者へ移ることはありません。
著作権は作品が生まれた時点で制作したライターに帰属し、契約書に譲渡条項がなければ受注者に留保されたままです。
もっとも、著作権を発注者へ譲渡する条項自体は実務で広く使われており、譲渡があるから不当な契約という話ではありません。
見るべきなのは、譲渡の条項があるかどうかと、その範囲がどこまで及ぶかという2点になります。
譲渡を前提とする案件なら、権利を手放す対価が単価に含まれているかを見積もりの段階で確かめましょう。
二次利用の権利は特記がなければ手元に残る
著作権を譲渡する条項があっても、翻案や二次的著作物の利用に関する権利までが自動的に移るわけではありません。
著作権法61条2項は、27条・28条の権利が譲渡の目的として特掲されていない場合、その権利は譲渡した側に留保されたものと推定すると定めています。
発注者が権利をすべて取得したい契約書では、「著作権法27条・28条に定める権利を含む」という文言が入るのが通例です。
文言の有無は、納品した記事が書籍化されたり、大きく書き換えて別媒体で使われたりする場面で効いてきます。
特掲の記載を見つけたら、その範囲まで含めた報酬なのかを受注前に確かめてください。
著作者人格権は譲渡できず不行使特約で扱う
著作者人格権は著作者本人だけに認められる権利で、契約書に何と書かれていても譲渡できません。
著作権法59条が一身専属と定めているので、譲渡条項の対象からは外れます。
そこで実務では、「著作者人格権を行使しない」という不行使特約を契約書に入れて対応するのが一般的です。
不行使特約があると、無断で改変されても同一性保持権を理由に異議を述べにくくなる点に注意してください。
改変や削除もありうると想定しておけば、公開後の仕上がりに戸惑わずにすみます。
署名記事として名前を出したい場合は、氏名表示の扱いを締結前に相談しておきましょう。
ポートフォリオへの掲載可否は締結前に確認する
著作権を譲渡した記事でも、発注者の許諾があればポートフォリオに載せられます。
権利が移っていることと、実績として見せてよいかどうかは、別々に決められる話です。
許諾を取らないまま媒体名や記事URLを公開すると、契約違反になるおそれがあります。
締結前に「実績として媒体名と記事URLを公開してよいか」とメールで尋ね、返信をそのまま保存してください。
公開不可と言われた案件は、ジャンルと文字数、担当した工程だけを書いて実績に加えましょう。
掲載可否のやり取りを1通残しておけば、後から実績を示す際の根拠になります。
責任範囲と契約終了にかかわる条項の確認ポイント

責任と契約終了にかかわる条項は、契約不適合責任・損害賠償・秘密保持・解除予告の4点にしぼって確認します。
すべての条項を読み込む必要はないので、報酬額に見合わない負担を負っていないかという観点で目を通してください。
契約不適合責任の期間と範囲を確認する
2020年4月施行の改正民法で、瑕疵担保責任は契約不適合責任へと名称も性質も変わりました。
古い契約書に「瑕疵担保」の語が残っていても、現行の民法では契約不適合責任の規定が適用されます。
請負は成果物の完成に義務を負う契約で、準委任は業務の遂行そのものが目的です。
準委任なら、期待した成果が出なかった場合でも、善管注意義務を果たしていれば債務不履行の責任は負いません。
請負では民法637条により、不適合を知った時から1年以内の通知で責任を追及されうるので、修正対応の期間と範囲を確かめてください。
損害賠償の上限が報酬額に見合うか確認する
損害賠償の条項で最初に見るのは、賠償額の上限が定められているかという点です。
報酬が数千円の案件で無制限の賠償責任を負う条項は、受け取る金額と釣り合いが取れていません。
上限を報酬額や委託料相当額までとする定めがあるかどうかを、条文の末尾まで読んで確かめましょう。
賠償の対象が直接の損害にとどまるのか、機会損失まで含むのかという範囲も、あわせて読み分けます。
上限の記載がない案件では、締結前にメールで上限の設定を打診しておくと安全です。
秘密保持と再委託の禁止範囲を確認する
秘密保持条項では、守るべき情報の範囲と期間、実績公開の可否をあわせて確認します。
クライアント名や記事URLを実績として出せるかどうかは、秘密保持の範囲しだいです。
公開可否の記載が見当たらない場合は、締結前に発注者へ確かめてください。
再委託の禁止条項があれば、取材や画像手配を外部の方へ回すことも認められません。
外注を前提に受ける案件では、事前に発注者から書面で承諾を得ておきましょう。
秘密保持の期間が契約終了後も続く定めなら、終了後の実績公開にも影響します。
中途解除の予告期間を確認する
契約終了の条項では、中途解除の予告期間と、途中までの報酬の扱いを確認します。
フリーランス新法により、6か月以上の業務委託を解除・不更新とする場合は30日前までの予告が義務です。
予告は書面のほか、FAXや電子メールなどの方法でも認められています。
契約書に「いつでも解除できる」とだけ書かれている場合は、予告の扱いを発注者へ確かめてください。
解除時に、着手済みの原稿へ報酬が支払われるかどうかも読み取っておきましょう。
6か月未満の契約や、フリーランス新法の対象外となる取引では、契約書の定めが判断の基準になります。
契約書がない案件はメールで条件を残す

契約書が届かない案件でも、メールで取引条件を残せば明示の記録として扱われます。
2024年11月1日施行のフリーランス新法により、取引条件の明示は発注側の義務です。
何をどう残せばよいのか、順に確認してください。
取引条件の明示は発注側の義務になっている
フリーランス新法では、業務委託事業者は委託後直ちに、書面または電磁的方法で取引条件を明示する義務を負います。
明示すべき事項は次の9項目です。
- 給付の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 業務委託事業者とフリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 給付を受領する日
- 給付を受領する場所
- 検査を完了する日(検査する場合)
- 支払方法の詳細(現金以外の場合)
口頭だけで進んだ案件は、報酬額の食い違いが起きても手元に記録が残りません。
報酬額や支払期日が示されない発注は明示が済んでいない状態なので、着手前に問い合わせましょう。
メールやチャットの記録でも明示にあたる
明示の方法は書面に限られず、メールやチャットの記録でも要件を満たします。
契約書という書式でなくても、9項目が文字で残っていれば明示にあたるという整理です。
チャットのやり取りは、後から遡れる形で保存しておいてください。
ただし、発注者が消費者である場合など、新法の対象外となるケースもある点には注意が必要になります。
適用範囲はフリーランス新法の対象と義務をまとめた記事で確認してください。
確認したい項目をこちらから送って残す
条件が示されないまま作業が始まりそうなときは、こちらから確認メールを送って記録に残しましょう。
次の文例は、案件名と数字を差し替えるだけで使えます。
件名:〇〇記事の業務委託条件のご確認
お世話になっております。〇〇です。
今回ご依頼いただいた記事について、次の条件で相違ないかご確認ください。
・記事内容:〇〇(〇〇字×〇本)
・報酬額:〇〇円(源泉徴収の有無)
・支払期日:〇月〇日
・納品日と納品方法:〇月〇日、〇〇にて
・修正対応の範囲:〇回まで
相違なければ、本メールへご返信をお願いいたします。
先方の返信が残れば、双方が合意した取引条件の記録として機能します。
契約書の修正を依頼するときの伝え方

契約書の修正依頼は、影響の大きい条項を2つまでに絞り、根拠と代案をセットで伝えるのが基本です。
すべての条項に赤を入れると、締結そのものが流れかねません。
優先順位のつけ方と、角を立てない伝え方を順に確認しましょう。
修正を求める条項は優先順位をつけて絞る
修正を求める条項は、報酬・修正回数・著作権のうち、自分の働き方に影響が大きいもの2つまでに絞ってください。
文字単価が低めの案件では、回数の定めがない修正指示が実質的な時給を大きく下げます。
実績を増やしたい段階なら、著作権と掲載許諾のほうを優先すべき場面もあるでしょう。
判断の順番は、金銭的な損失の大きさ、作業時間への影響、将来の実績づくり、と並べると迷いません。
全条項に修正を求めると発注側の確認工程が長引き、案件そのものが立ち消えになるおそれがあります。
法令や実務を根拠に代案を添えて提案する
修正依頼は「削除してください」ではなく、根拠と代案をセットにした提案の形にすると通りやすくなります。
文例1は、修正回数に上限を設ける依頼です。
「修正は2回までとし、3回目以降は追加料金でのご相談とさせていただけますか」と書き添えます。
文例2は、ポートフォリオ掲載の許諾を加えてもらう依頼です。
「著作権の譲渡は承知しました。あわせて、公開後に実績として紹介する許諾も加えていただけますか」と続けてください。
著作権は譲渡条項がなければ制作者に残るのが原則で、掲載許諾の相談は不当な要求にあたりません。
断られたときは、その条件のまま最後まで書き切れるかを基準に、受けるか降りるかを決めましょう。
契約書を締結してから保管するまでの手順

契約書の中身に納得できたら、あとは締結と保管の2工程で完了します。
締結の方法は紙の押印と電子契約のどちらも実務で使われており、収入印紙が要る場面も限られていて、身構える必要はありません。
2つの工程を順に確認して、締結後の管理まで整えてください。
押印と電子契約のどちらでも締結できる
契約書は、紙に押印する形でも、PDFなどを使う電子契約でも取り交わされるのが実務です。
2024年11月1日に施行されたフリーランス新法でも、取引条件の明示を書面と電磁的方法(メール等)のどちらでも認めています。
メールでのやり取りも取引条件の記録として残せますので、押印の形式そのものにこだわる必要はありません。
締結が済んだら、契約書本体と、条件を詰めたメールやチャットのログをまとめて保管してください。
報酬や修正回数の認識違いが起きたとき、契約終了後も残しておいた記録が判断の拠りどころになります。
印紙が必要になるのは継続契約の一部だけ
単発のWebライティング案件では、収入印紙が必要になるケースはそれほど多くありません。
印紙が要るのは、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)に該当する場合で、税額は4,000円です。
ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内で更新の定めがなければ第7号文書の対象外となり、印紙は不要になります。
第7号文書の対象取引は売買や請負などに限られ、成果物の完成を目的としない準委任契約は該当しない場合があるので、契約の型もあわせて確認してください。
判断に迷う場合は、印紙の要否と負担者を締結前に発注者へ確認しておくと安心です。
まとめ

Webライターが契約書で確認すべき点は、報酬・修正・著作権・解除にかかわる9つの条項に絞れます。
全条項を読み込まなくても、締結前の自衛は十分に可能です。
著作権も、譲渡条項が書かれていなければ執筆した本人に残ります。
契約書が渡されない案件は、メールで取引条件を残しておけば記録として有効です。
手元の契約書を開いて、冒頭の表と照らし合わせてみましょう。
書面がない案件は、今日中に条件確認のメールを送ってください。
Q. 契約書は必ず必要ですか。
A. 契約書という形式でなくても、条件がメール等で文字に残っていれば取引を進められます。フリーランス新法では、発注者に取引条件を書面やメール等で明示する義務があるので、条件の提示を求めても失礼にはあたりません。
Q. クラウドソーシング経由でも契約書は要りますか。
A. クラウドソーシング経由でも、条件の確認は欠かせません。サイトの利用規約とは別に、報酬額と著作権の扱いを個別に確かめておきましょう。メッセージ機能でのやり取りも、条件を示す記録として残ります。
Q. 契約書の修正を依頼すると印象が悪くなりませんか。
A. 条件をすり合わせる行為は事業者同士として当然です。根拠を添えて丁寧に質問すれば、実務に慣れたライターという評価にもつながります。
Q. 署名した後で条件を変えられますか。
A. 双方が合意すれば変更できます。口頭で済ませず、覚書やメールで変更後の条件を残しておいてください。
Q. 収入印紙は誰が貼りますか。
A. 印紙の負担者は、締結前に発注者と確認しておきましょう。契約期間が3か月以内で更新の定めがない契約書は、第7号文書にあたらず印紙が不要です。