セールスライティングの書き方でつまずく原因は、型の知識不足ではなく、書く前に材料が決まっていない点にあります。
誰の・どの不満に・何を根拠に応えるかを先に決めると、PASONAなどの型はその並べ替えにすぎません。
材料がないまま型へ文章を流し込むと、途中で手が止まるか、誰にも刺さらない原稿になります。
商品資料を文章の材料へ変換する手順から、セールスライティングの書き方を工程ごとに解説しているので、ぜひ参考にしてください。
セールスライティングの書き方は5工程

セールスライティングの書き方は、材料集め・訴求決定・型への配置・執筆・検証の5工程に分解できます。
型に当てはめるのは5工程のうちの1つで、最初に手をつけるのは材料集めです。
| 工程 | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1. 材料集め | 読者の不満と商品の根拠を集める | 最も長い |
| 2. 訴求決定 | 誰のどの不満に応えるか決める | 中程度 |
| 3. 型に配置 | PASONAなどに材料を並べる | 短い |
| 4. 執筆 | 見出しから本文へ書き起こす | 中程度 |
| 5. 検証 | 反応を見て書き直す | 継続 |
表の上から順に進めれば、書き出しで迷いません。
書き始める前に集める4つの材料

用意する材料は、読む人・その人の不満・不満を解消できる根拠・競合との違いの4つです。
セールスライティングが相手にするのは、商品をすでに知っていて、買うかどうかを検討している段階の読者になります。
言い回しの上手さより、書く前に集めた材料の精度で結果が分かれます。
4つを紙の上に並べてから、文章に手をつけてください。
売る相手を一人に絞る
読み手は、属性の幅ではなく実在する一人として決めてから書き始めます。
「20代〜40代の女性」のように幅で捉えると、誰にも当てはまらない当たり障りのない文章になりがちです。
クライアントから受け取った資料や、問い合わせ履歴に残る相談内容を見て、いちばん件数の多い相談者を1人選んでください。
書き出す量は、年齢と職業、商品を知ったきっかけ、今も買っていない理由の3行で十分です。
1人に決まると、どの不満を拾い、どの根拠を出すかの取捨選択が一気に楽になります。
不満を本人の言葉のまま書き出す
レビュー欄には、「思っていたより組み立てが面倒だった」といった生々しい言い回しが並んでいます。
不満は、要約せずに本人が使った言葉のまま書き写してください。
「利便性に課題がある」とまとめ直した時点で、読者が自分のことだと気づく手がかりが消えます。
集める場所は、商品ページのレビュー、SNSの投稿、クライアント側に残っている問い合わせやアンケートの回答です。
星2〜3の評価には迷いや不安が書かれていることが多いので、5〜10行を目安に、そのまま貼り付けるつもりで集めます。
商品が不満を解消できる根拠を集める
根拠とは、不満が解消されると読者が信じられる事実のことです。
「使いやすい」という評価ではなく、仕様・数値・実績・保証といった、あとから確かめられる形の情報を指します。
商品ページのスペック表、公式サイトの製造工程のページ、クライアントから届いた社内資料や導入事例を当たってください。
並べ方にも決まりを作っておくと迷いません。不満の1行ごとに、打ち消す根拠を1行ずつ対にして書き出します。
対になる根拠が見つからない不満は、無理に触れず、扱うかどうかを先に決めておきましょう。
競合と比べた違いを一行にまとめる
競合との違いは、最終的に一行へ落とし込みます。
比較の材料になるのは、同じキーワードで検索して上位に出る2〜3社の商品ページと、そこに書かれた価格・保証・納期の表記です。
価格の安さだけを違いにすると、より安い競合が現れた時点で効力を失います。
値下げ以外で選ばれる理由を探し、「A社と違い、〇〇まで含んで同じ価格」のような形で一行にしてください。
4つの材料は、次のシートの形で1枚にまとめておくと扱いやすくなります。
- 読む人:1人分の3行
- 不満:本人の言葉で5〜10行
- 根拠:不満と対になる行数
- 違い:一行
シートが埋まっていれば、あとは順番を並べ替えるだけで、文章の骨組みが立ち上がります。
文章の型は3つ知っておけば足りる

覚える型は、PASONA・QUEST・PREPの3つで十分です。
案件で出てくる場面は、3つの使い分けでほぼ収まります。
| 型 | 要素 | 向く媒体 | 読者の状態 | 文章量 |
|---|---|---|---|---|
| PASONA | 問題→親近感→解決策→提案→絞込→行動 | LP・セールスメール | 悩みは自覚、商品は未認知 | 長文 |
| QUEST | 絞込→理解→教育→刺激→行動 | LP・メルマガ | 情報を集めている途中 | 長文 |
| PREP | 結論→理由→具体例→結論 | 記事・見出し単位 | 答えを早く知りたい | 短文 |
迷ったら表の「読者の状態」から選び、それぞれの中身を確認してください。
PASONAの法則
商品をまだ知らない読者に、悩みの側から入って売るならPASONAの法則です。
マーケッターの神田昌典氏が1999年に開発した型で、新旧の2種類があります。
旧は問題→煽り→解決策→絞込→行動の5要素で、新は煽りを親近感に替え、提案を加えた6要素です。
新PASONAが公開されたのは、2016年刊の『稼ぐ言葉の法則』です。
あおるより読者と同じ側に立つ並びへ変わった点が、新旧の分かれ目になります。
QUESTフォーミュラ
QUESTフォーミュラは、5つの要素の頭文字です。Qualify(絞り込み)・Understand(理解)・Educate(教育)・Stimulate(刺激)・Transition(行動)の順です。
コピーライターのMichel Fortin氏が2005年に発表し、AIDAの法則を補完する形で作られました。
冒頭で読み手を絞り込むので、情報を集めている途中の読者に届きやすくなります。
PREP法
PREP法とは、Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の4要素で書く型のことです。
答えを早く知りたい読者に向くので、Web記事の見出し単位で使ってください。
結論を先に出し、理由と具体例で支え、最後にもう一度結論を置くと、拾い読みでも要点が残ります。
PASONAやQUESTの各パートの中身をPREPで書くと、長文でも形が崩れません。
下書きは見出しから書き進める

下書きとは、白紙から文章をひねり出す作業ではなく、決めた型の要素を見出しに変換して上から埋めていく作業です。
見出しの並べ方、書き出しの一文、主語の置き方、一文の長さ。4点を押さえれば、手が止まる場面はほとんどなくなります。
見出しで全体の流れを先に決める
まず、前の工程で選んだ型の要素を、そのまま見出しの言葉に置き換えます。
新PASONAなら、Problem(問題)は「〜が起きる原因」、Solution(解決策)は「〜を防ぐ3つの方法」と置き換えましょう。Offer(提案)は「料金と保証の中身」という具合です。
要素ごとに見出しを1本ずつ立てれば、6本で記事の骨格ができあがります。
見出しだけを並べて上から読み、話が飛んでいないかを確認してください。
流れが通っていない原稿は、本文をどれだけ磨いても読者には届きません。
見出しの粒度や本数の決め方は、Webライターの構成案の作り方5ステップ|テンプレートと評価されるコツで詳しく扱っています。
冒頭の一文で読む人を名指しする
「多くの方が悩んでいます」という書き出しでは、誰に向けた記事なのかがぼやけます。
1行目には、書く前に決めた「誰の・どの不満に」をそのまま置くようにしてください。
たとえば「提案文を10件送っても返事が来ない」と書けば、同じ状況の読者は自分の話だと受け取ります。
職業・経験年数・直前の失敗のうち、どれか1つを具体的に入れるだけで十分です。
反面、書き手の経歴や商品の説明から始めると、読者は自分に関係のない文章として読み飛ばします。
冒頭全体の組み立て方はWebライターのリード文の書き方|4要素で埋めるテンプレと例文で説明しているので、あわせてご覧ください。
主語を読者にして本文を書く
主語は、書き手や商品ではなく読者に置きます。
「当社は初心者向けのサポート体制を整えています」と書くと、文の主役は売り手のままです。
「初めての方でも、申し込んだその日から質問できます」と書き換えると、同じ事実でも読者の行動が中心に来ます。
変えたのは主語だけで、伝えている内容は1つも増えていない点に注目してください。
文の頭に「当社」「弊社の商品」が並んでいたら、そこを「読み手が何をできるか」に入れ替えていきます。
一文を短く切って読みやすくする
一文は、長くても80字までに収めます。
スマホの画面は横幅が狭く、パソコンで2行に見える文が、5行以上に折り返されることも珍しくありません。
折り返しが増えるほど、読者は文の主語と述語を目で追い直すことになります。
「悩みを書き出してから解決策を示すと納得されますが、順番が逆だと押し売りに感じられます」は、2文に割ってください。
「読者の悩みを書き出してから、解決策を示します。順番が逆になると、押し売りに感じられます」で意味は通ります。
もっとも、短い文だけを並べると、かえって単調な文章になるので、長い文と短い文を混ぜて書き進めましょう。
書き上げた文章は4か所を読み返す

読み返す場所は、主語・断定・専門用語・行動の指示の4か所です。
全文を頭から直そうとすると時間だけが過ぎ、判断の基準もぶれていきます。
原稿の上で機械的に判定できる項目に絞ったので、順番に当てていってください。
読者が主語になっているか
原稿を開いたら、段落ごとに1文目の主語へ印を付けていきます。
商品名や社名の印ばかりが並ぶなら、書き手の説明で埋まった原稿になっている合図です。
判定の線は、1文目の主語が読者でない段落が半分を超えていないかで引きます。
数えるだけの作業なので、感覚で迷うことはありません。
引っかかったときは、機能を述べた文の後ろに「だから読者はどうなるか」を足し、主語ごと入れ替えてください。
「軽量設計です」で止めるのではなく、「軽いので、通勤かばんに入れても肩が痛くなりません」まで書けば、視点は読者へ戻ります。
根拠のない断定が残っていないか
「必ず」「絶対」「誰でも」といった言葉が残っている場合は、根拠とセットになっているかを確かめます。
検索機能で断定語を拾い、その文の近くに出典・数値・条件のどれかがあるかを見ていってください。
何も付いていない断定は、読者から見ると書き手の思い込みと区別が付きません。
直し方は2つで、出典を添えるか、「〜のケースが多い」と条件付きに書き換えるかのどちらか。
文章の型と成約率の関係のように、測定条件を示した一次データが見当たらない数字は、そもそも載せない判断も要ります。
専門用語を説明せずに使っていないか
読者が初めて見る言葉が、説明のないまま2回目、3回目と出てくることがあります。
カタカナ語・略語・業界の言い回しに印を付け、初出の位置に1行の言い換えがあるかだけを見ていきましょう。
説明が見つからない語には、「〜とは〜のことです」の1文を足すか、日常の言葉へ置き換えてください。
たとえばコピーライティングとセールスライティングの違いを挙げると、前者は認知やイメージ形成を狙う短い文、後者は購買行動を促す長い文という差があります。
書き手には自明でも、読者には初耳の区別が混じっているものなので、短い言い換えを添えておきましょう。
行動の指示が一つに絞れているか
締めくくりで読者に求める行動は、1つに絞ります。
原稿の終盤にある「申し込む」「資料を請求する」「登録する」といった動作を数えて、2つ以上あれば多すぎる合図です。
選択肢を並べられた読者は、どれも選ばないまま離れていきます。
引っかかったときは、いちばん売上に近い動作を1つだけ残すと決めて、ほかはリンク1本の案内へ落としてください。
新PASONAの締めはAction、QUESTフォーミュラの最後はTransitionで、どちらも動作は1つに定まっています。
売れる文章でも避けるべき表現

避けるべき表現は、誇大な言い切り・過度な不安のあおり・他社を下げる比較・出典のない数字の4つです。
強く書くこととあおることは別物で、文章の強さは根拠の量で決まります。
納品後に指摘されて困りやすい順に確認してください。
誇大な表現は法律に触れる
商品の効果を実際より大きく見せる表現は、景品表示法に触れるおそれがあります。
2026年9月時点では、消費者庁の景品表示法のページで、優良誤認表示と有利誤認表示が不当表示として説明されています。
実際よりも著しく優良に見せる表示と、取引条件を著しく有利に見せる表示のことです。
「必ず痩せる」「日本一の実績」といった語は、裏づけとなる資料がない限り使わないでください。
ライターが書いた一文が、クライアントの信用低下につながることもあります。
強い言い切りを入れたくなったら、根拠となる資料の有無をクライアントに確認しておきましょう。
不安をあおりすぎると信頼を失う
「今すぐ対策しないと手遅れになります」といった一文は、読み手の警戒心を強める表現です。
2016年刊行の『稼ぐ言葉の法則』で公開された新PASONAでは、旧版のAgitation(煽り)がAffinity(親近感)に置き換わりました。
不安で押し切る形から、読者の状況に寄り添う形への変化です。
不安に触れるなら、実際に起きる不利益を一つだけ挙げ、解決策とセットで示す書き方にしてください。
同じ不安を何度も繰り返す原稿は、読者が売り込みを察知して離脱する原因になります。
他社を下げる比較は書かない
他社の名前を出して下げる比較は、書かないほうが安全です。
比較の根拠を示せない場合、事実に反する中傷と受け取られ、クライアントが取引先との関係を損なう事態にもなりかねません。
比較を入れるなら、公表されている料金表や仕様など、誰でも確認できる公開情報に限るのが原則です。
「A社は対応が遅い」のような評価は書かず、「A社は3営業日以内、B社は5営業日以内と公表しています」のように、出典のある事実を並べる形にします。
読み手が知りたいのは他社の欠点ではなく、自分の条件に合うかどうかです。
判断に迷ったときは、他社に触れずに自社商品の強みを具体的に書き切ってください。
出典のない数字は使わない
数字は、出典を確認してから書きましょう。
セールスライティングの解説記事には「この型を使えば成約率が◯倍になる」という説明が見られますが、測定条件や比較対象を示した一次データは確認できませんでした。
出典のない数字は、読者が検証できない主張でしかなく、根拠を問われたときに答えられません。
調査元・調査時点・対象をセットで示すのが、数字を扱うときの最低条件です。
クライアントから提供された実績値を使う場合も、公開してよい数値か、いつ時点のものかを確認してから原稿に入れてください。
自分の記事で同じ轍を踏まないよう、原稿の数字を一つずつ出典と照合する時間を、納品前に確保しておくと安心です。
まとめ:セールスライティングの書き方
セールスライティングの書き方は、型を覚えることではなく、材料をそろえることから始まります。
誰の、どの不満に、何を根拠に、どう応えるのか。
4つが決まれば、PASONAやQUESTといった型は、そろえた材料の並べ替えにすぎません。
仕上げの推敲では、宛先・根拠・提案・行動の4か所に立ち返り、決めた材料と本文がずれていないかを確かめてください。
まずは手元の商品で、材料シートの4行を埋めてみましょう。